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日本の中小企業でこそロボットが活躍できる

中小企業診断士 馬場 正博

 21世紀の初頭より、AIなど革新的な技術の成熟度が年々高まり、低コストで実用性が高い、革新的な製品・サービスが次々と登場しています。ロボットも実用化が進む革新的技術の応用製品の一つといえるでしょう。近頃では、企業の受付だったり、ショッピングモール、回転寿司店など、町でペッパー君の姿を見かけることも珍しくなくなりました。主に工場などで利用される産業用ロボットの分野でも、協働ロボットと呼ばれる、従来よりも低価格のロボットアームが普及しはじめています。

 

 「協働」というのは人間と協調、協力して働くロボットという意味で、英語ではCollaborative Robotの略からRobotならぬCobotとも呼ばれています。協働ロボットは自家用車程度のコストで購入でき、また専門のプログラマーでなくても容易にプログラミングができることなどから、中小企業の製造現場でも活躍するようになっています。小型軽量で力も弱いため、同じ現場で働く人の安全性が確保しやすいということも、導入がしやすくなっているポイントです。

 

 湘南の藤沢市にある高井精器はベアリングの保持器を中心とした金属部品の製造を担う創立114年の老舗企業です。社員数は100名未満の中小企業ですが、最先端の協働ロボットを導入し製造工程の省人化に取り組んでいます。 

 

 高井精器では、まず初めにプレス器で部品を成形する作業を協働ロボットにやらせてみました。直径2cm程度の金属のリングをロボットがつまみ上げて、プレス機にセット、プレスが終わるとその部品を取り外す、という単純作業です。当初、部品をつまみ上げる時に部品がどの位置にあるのかカメラをつかって判定する方法をとりましたが、画像処理がうまくいかなかったり、置いてある部品の位置のちがいなどでつかんだ位置や角度がズレて、プレス機にうまくセットできないなどの問題がありました。そこで、一計を案じ、ロボットが部品をつまみ上げる場所に、一つづつ順番に部品が転がってきて停止する自動部品供給装置を自社で独自に開発しました。「すくい丸」と命名されたその自動部品供給装置は、ドラムを半分にした形状のカゴに部品をまとめて入れておくと、回転する円盤が観覧車のように一つづつ部品をすくいあげ、高い位置から部品をシュートに転がして、ロボットのつまみ上げポイントに部品を供給します。円盤が部品をすくいあげる動作は、一定方向の回転だけでは部品が円盤のフックにすんなり入らないことがあるため、一定間隔で逆回転して部品群をならしながら一つづつすくいとるという、きめ細かな動きをするように作られています。仕掛けとしては簡単なものにも見えますが、実際に部品を一つづつ失敗せずに正確にすくいあげて供給するようにできるまでには、他の既存装置の設計ノウハウなどを活用しながらも、試行錯誤と調整を何度も繰り返す苦労がありました。その苦労の甲斐もあり、部品をすくい丸のカゴに投入しておけば、ロボットとプレス機が無人で成形作業を完結させるプロセスの自動化を実現することができたのです。

 

 このようにロボットの弱点をカバーし、ロボットを助ける仕組みを創意工夫で開発して問題を解決していくところは、まさに日本のものづくりの強さを支えている中小企業の現場力を象徴的に示しています。

 

 ちなみに、高井精器で採用されている協働ロボットはヨーロッパの製品で、世界中に産業用ロボット導入の裾野は広がっています。かつては人口が多いために人件費の安さが強みだった中国でさえも、今では産業用ロボットの開発と普及を国策で強力に推進しています。これからのグローバル競争においては、産業用ロボットの利用が欠かせないものとなっていくことは間違いありません。

 

 日本の製造業には、これまでも様々な創意工夫で現場の改善を積み重ねてきた強みがあり、多種多彩なカラクリ仕掛けなども生み出しながら、省力化、効率化を図ってきた歴史があります。協働ロボットは、そんな日本の中小企業でこそ、現場力を活かした導入と活用によって、その真価を発揮していくことができると考えられます。そして、そこでは生産性向上だけでなく、人手不足の解消や、匠の技術継承のための人材育成時間確保などの課題解決にも貢献することができるため、協働ロボットはこれからの日本の中小企業を支えていく重要な戦力の一つとなっていくことでしょう。