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コロナの影響の中、ストレスとどう向き合う?

中小企業診断士 宮坂芳絵

新型コロナ・ウィルスの影響で、ストレスに悩まされることも多くなってきました。早く収束させたいと思いも強い一方で長期戦になることも予想されており、こうした中でストレスとどう向き合うのかを考えてみたいと思います。

 

1.そももそ、ストレスって?

改めて、ストレスとは何かを確認しておきましょう。

 

医学・心理学の分野では、心や体にかけられる外部からの刺激を「ストレッサー」と呼び、そのストレッサーに適応しようとして生じる心や体の反応を「ストレス反応」と呼んでいます。つまり、その原因になる「ストレッサー」とその結果として出てくるのが「ストレス反応」です。

 

私たちのこころや体に影響を及ぼすス「トレッサー」には、様々な種類があります。大きな分類では、身体的ストレスと精神的ストレスに分けられます。

身体的ストレスは、例えば暑さや寒さ、騒音や混雑などの他、運動不足や夜更かし、不規則な生活、過食・小食などがあります。精神的ストレスは、人間関係や仕事上の問題、家庭の問題、将来の不安、結婚や転移等環境の変化などがあります。改めて考えると、私たちの生活の中には、ストレスの原因になるストレッサーは、身近なものです。人は生活している以上、何かしらのストレスを感じるものでもあります。

 

そして、ストレッサーによって引き起こされる「ストレス反応」は、心理面(気分の落ち込み、興味・関心の低下)、身体面(頭痛、肩こり、腰痛、目の疲れ、動悸や息切れ、胃痛、食欲低下、便秘や下痢、不眠など)、行動面(飲酒量や喫煙量の増加、仕事でのミスや事故、ヒヤリハットの増加)の3つに分けることができます。

 

ストレスは積み重なると、心や体に深刻な影響を及ぼします。その面では、新型コロナ・ウィルスの影響が長期にわたる場合にその影響が大きくなる可能性もあり、注意が必要です。

 

しかし、様々な観点で見ていくと実はすべてのストレスが悪いというわけではありません。ストレス反応というのは、ストレッサーを受けたときにでる「シグナル」でもあるのです。したがって、ストレスを感じることは、ストレッサーを避ける対応を早め、回復につなげることになります。つまり、ストレスがあるからこそ、心身を守る仕組みもスムーズに働くのです。そういう意味では、ストレスの存在に気づくことは非常に大切です。

 

2.テレワークや在宅勤務によるストレス

この新型コロナ・ウィルスの影響でテレワークや在宅勤務になった方も多いかもしれません。テレワークの取り組み方には様々なものがありますが、話を聴いてみると、通勤がなくなってよかったと話す方もいる反面、仕事のオン・オフがつけにくい、家族がいる中での仕事は落ち着かず集中ができない、そもそも環境が整わない・・など、ストレスを抱える方も少なからずいらっしゃいます。

 

テレワークでは、仕事をさぼってしまうのでは・・と考える方も多いのですが、反対に過度に頑張りすぎてしまうこともあるようです。職場では、近くの方に声を掛けられてふと挨拶をしたり、他愛もない話をしたり場面もあります。しかし、一人で仕事に向かっているとそのような場面はありません。実は挨拶や雑談のふとした瞬間がストレス解消や心の切り替えに役立っているのです。また、ちょっとした不安を解消しにくく、悩んでしまうということもあります。職場であれば先輩や上司に気軽に聞けるのですが、在宅ではなかなかそうもいかず、小さな不安が積み重なってしまうという傾向もあるようです。

 

テレワークでの仕事はそのものが慣れない環境ですからストレスを抱えることは、普通の反応で、ストレスを感じることを悪いのだと思う必要はありません。

 

3.コロナのストレスの中心になる「不安」

今回のコロナ・ウィルスによるストレスの厄介なところは「不安」が大きくなっているところです。「不安」と書きましたがその大きなところは、コロナ・ウィルスというものの「実態がわかりにくい」ことと、「いつまで続くかわからない」という部分でしょう。

 

実態が分からないので、ニュースから目が離せず、政府や医療体制などが信用できない・・そして、手洗いや外出自粛などできることもあるけれども、どれほどの効果があるのかわからない・・したがって、気を抜けない、目が離せないという状況が続いています。さらに、○○週間・・など期間がわかっていれば、現状に対処したり将来に向けて動くこともできますが。しかし、今回は長いところでは年明けまで・・などの情報まで出回っています。期間も将来も描けないままなのです。通常私たちは、不安があるときには、将来を予測して対策を立てるという行動をしていますが、今回はその通常の動きさえできないことが、不安をより駆り立てているといわれます。

 

そうした中で、この「不安」とどう立ち向かえばよいのか。これは答えがあるわけではありません。しかし、心理学での観点で提案では、まずはむやみに情報収集をしすぎない、情報収集は信頼できるものに限ることです。ワイドショーなどでは様々な立場でコメンテーターが意見を言いますが、不安がある中でそうした情報を見聞きすると、迷いが生じるだけでなく感情の起伏が起きやすく、心理的な負担も大きくなります。不安だからとむやみに情報収集するのではなく、あえて情報をカットしていくことも必要です。例えば感染状況などは公的な会見、ビジネス上の給付や貸付などは商工会議所などがおすすめです。

 

そしてもう一つ「今できること」に集中することもおすすめです。ただし、テレワークでの業務でもそうですし、いままでにない不安とストレスを抱えた中での「慣れない状況」ですから、完璧を求めるのではなく8割程度の出来でよい、というくらいの気持ちでいてください。これは、自分に対しても、相手に対しても、です。