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今後の展示会の行方

中小企業診断士 田中研二

リアル展示会の再開

企業に対してモノやサービスを提供している、いわゆるBtoB型の中小企業にとっても格好の営業機会であった展示会ですが、今般のコロナ禍で大きな影響を受けました。緊急事態宣言前後での開催中止はもちろんでしたが、いわゆる「三密」を求められる生活様式が求められるようになり、予定通りの開催時期の実施に踏み切れずに延期になった展示会も多くありました。国内主要開催拠点である東京ビッグサイトや幕張メッセは9月からの展示会再開を予定しています。

 

展示会を活用している企業では、あらかじめその出展時期を事業運営のスケジュールに組み込んで製品やサービスの開発や営業活動も行っていることも多く、貴重な営業・調達の機会が失われてしまい、展示会の再開には多くの関心を寄せているところでした。

 

しかし、展示会の開催手法も今までの運営のまま、という訳にはいかないようです。展示会を主催する企業の業界団体である一般社団法人日本展示会協会では「展示会業界における COVID-19 感染拡大予防ガイドライン」を作成し、そのガイドラインに従った感染予防対策を徹底することでようやく開催実施に踏み切れたようです。ただし、どれほどの来場者が見込めるかは今までの開催実績の情報が役に立たないことが予想されます。出展する企業も今までと同じように出展を続けて同じような成果を得られるか不確実性が高く、大いに頭を悩ませていることでしょう。また、そもそもリアルに人が集まることで感染症のリスクを抱えながら展示会に出展することに意味があるのか、といったことを考えている企業も多いのではないでしょうか。

 

バーチャル展示会

そこで着目したいのが、バーチャル展示会です。

バーチャル展示会はこのコロナ禍で急に始まったことではなく、以前から存在していました。特に国土の広いアメリカでは元々リモート商談の習慣があり、バーチャル展示会ならば会社に居ながらにして参加や出展ができることから通信環境の発達とともに大いに発展してきました。実は日本でも「ITmedia Virtual EXPO」が2009年から開催されています。

 

バーチャル展示会とはWEB上で開催される展示会です。ちょっとイメージしづらいですが、その一例では、そのWEBサイトを訪れるとリアルな会場さながらのブースが立ち並び、来訪者はそのブースを覗いて出展社とリモート商談することが可能な仕組みになっています。

バーチャルであることの大きなメリットは、365日開催可能であり、出展社にとっても会場コストや移動コストも削減でき、天候の影響も受けないことなどが挙げられます。ブースデザインの自由度も高く、削減できたコストでしっかりとした製品案内動画を制作することもできそうです。まさに中小企業にとっては「追い風」ともいえる状況ではないでしょうか。

 

デメリットとしては、来訪者にとっては、現物を手に取って確認することができないことや、出展社にとっては、呼び込みやサンプル配布などのアピールがしづらい、といった点があります。しかし、こういった点はリアル開催でも工夫が必要であったのと同様で、どのように克服していくかは、現物を手に取ってもらえない分、丁寧なセールストークも必要でしょうし、そもそも来訪者に見つけてもらうようにどのように魅力的に見せるか、といった工夫が求められます。

 

まとめ

今後、バーチャル展示会が増えてくることが予想されますが、日本にさらに定着するかどうかは、その来訪者数と商談実績がカギを握るでしょう。

 

 

今後もしばらくは感染症対策を行いながらの営業活動が求められています。商談機会をどのように獲得するか、ぜひバーチャル展示会にもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

以上