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コロナ禍を乗り越える3つの黄金律(ポイント)

中小企業診断士 金綱 潤

 

御縁あって、8年間中小企業庁さんの委託事業として年間、約7,700社の事業者さんのご相談をコーディネートする仕事に携わっています。経営面の相談相手として無料で何度でも利用出来る施策になっています。これは国が税金を活用して相談対応事業を支援しているからです。年々の相談に来られる事業者さんの数も増え、業種・業態も経営ステージ(創業前、創業、事業成長、事業成熟、M&A、事業承継、事業転換等)も多岐に渡る中、私も多くの気づき頂きました。

 

黄金律とは、コトバンクによれば、英語でGolden Ruleの意味です。キリストが山上の垂訓中に示したとされるキリスト教の根本的倫理。すなわち,〈なにごとでも人びとからしてもらいたいことは,すべてそのとおり人びとにもしてあげなさい〉という教えの意味です。

今回はそうした経緯から事業者さんがこのコロナ禍を乗り越えるGolden Rule(ポイント)を3つに絞ってお話したいと思います。

 

1:絆の確認と補強

ビジネスの原点である『人と人の絆』が毀損してしまう現象がコロナによって益々深刻になっています。感染防止への観点から対面でのコミュニケーションが出来なくなりました。対顧客だけでなく、従業員、取引先間でのコミュニケーションにおいても劇的な変化が起きています。しかしながらビジネスの価値は、自社以外の存在が認識する以上、彼等との絆を深める努力を惜しんでならないと痛感しています。

 建築資材加工会社のK社では、今まで対面での会議や商談がメインでしたが、コロナ禍、オンライン会議や公的支援機関の支援施策を活用してビジネスプランコンテストにオンラインチャレンジしての販路開拓に繋げ新規取引先を増やしています。

 

2:未来への投資

コロナ禍の特徴としては、様々な現象が挙げられますが、その中でも特徴的なコトは長期化とダメージ予測の困難化です。「いつまで我慢すれば良いのか?」「どこまで体力(資金等)を用意すれば良いのか?」が見えないことです。

 ですので、今後も想定不可能な事象が起きても、「二の矢、三の矢が打てる準備」が重要になります。

 具体的には3つ提案します。

  1. 今まで忙しさ等のせいで放置してきた経営課題への早期着手
  2. 収支だけでなく、キャッシュフロー(支払い余力)重視の業績管理システムへの転換
  3. マルチな顧客との接点づくり

です。

1 については、今はかってない程の様々な支援施策が出ていますので、「今やらずしていつやる。」と言う姿勢で取り組んでいただきたいと思います。例えば、従来であったら事業承継の障害になっていた相続税や贈与税の特例恩恵が受けられる特例承継計画の提出期限は令和5年の3月までです。中小企業診断士をはじめとして無料で相談対応してくれることも増えているので是非、「一歩踏み出して」下さい。

インテリアデザイン業のP社では、今まで対面のみでしていた営業活動にオンライン商談会のシステム投資をすることで、成約率向上に繋げています。

 

2 については、事業収益力だけでなく、資金繰りを最低でも月次でしっかりマネジメント(直視してやりくり)していただきたいと言うことです。

常温加工食品メーカーのY社では、コロナ特別融資制度を活用する前から、日繰り資金繰り表づくりを社長自らが学び、そのやり方を全社員にも共有し資金繰り改善に努めて成果を上げています。売上目標だけでなく、資金繰り管理の仕組みを全社員に理解させることで『給料が毎年上げられる会社』に向けての現場改善が目覚ましい成果が上がりつつあります。

 

3) については、1でも述べたようにwith corona、 post coronaでは、直接的顧客のみならず、間接的な顧客も意識したコミュニケーションの品質が問われる時代になります。

直接・間接とは取引関係有無の意味です。例えば車メーカーを考えた時には、車を購入するドライバーのみならず、車購入には全く関わらないものの、車社会の影響を大なり小なり受ける生活者のことを無視しては事業存続そのものが難しくなるからです。

具体的には、対面、会議、電話、メールのみならず、ホームページ、Facebook、Instagram,Twitter等のSNS、プレスリリース等のコミュニケーション手段全てに関して、どうするか?について考えていただきたいと思います。どうするか?とは、コミュニケーション相手、目的、手段の観点から、自社の広報PR戦略を固め、実行頂きたいということです。

 

3:健康最重視経営

1、2で延べたことは大切なことですが、それよりも更に重要なのは「健康維持と増進」です。意味するところはコロナウイルス感染防止に向けた取り組みをするだけでなく、顧客の気持ちや従業員のモチベーション等、「目に見えない」コトに対しても手を打っていただきたいということです。

 

 都内で居酒屋を4店舗経営しているM社では、個人別、店舗別、企業別の段階で『TO DO リスト』を作成して、各々の単位でセルフチェックをしながら『改善率の向上を』図っています。

そこでご提案です。コロナ禍でも環境変化をチャンスに変えている事業者さんほど、『必要以上に心配しない』と言う姿勢を貫いています。需要と供給の動向がどうせ不透明なのだから『今出来ることに集中する』ことに意識を向けて身体と心のメンテナンスに意を払っていただきたいと思います。事業の成長とご繁栄を心よりお祈りしいます。ご一読誠に有難うございます。                                 以上