中小企業診断士・税理士 武田圭子
株主と経営者が同一の同族会社と役員間の取引については、第三者との取引と異なり、取引条件等を比較的自由に決めることができます。このため通常の取引金額とかけ離れた場合、役員給与や受増益とされることがあり、税務上注意が必要となります。
税務上トラブルになりやすい会社と役員間の取引には次のようなものがあります。
1.会社から役員に対する金銭の貸付
無利息や通常の利率より低い利率の利息の場合は、通常の利息との差額が役員に対する給与所得課税となります。
2.役員から会社に対する金銭の貸付
通常の利率より高い利率で利息を受け取っている場合は、通常の利息との差額が役員に対する給与所得課税となります。
3.役員から会社に対する資産の売買
- 時価の2分の1未満で売買した場合→みなし譲渡課税
会社側は時価と売買価額の差額は受贈益(益金算入)
役員側は時価で譲渡したとみなされ、時価で譲渡所得の計算をします。 - 時価の2分の1以上で時価未満による売買をした場合
会社側は時価と売買価額の差額は受贈益(益金算入)
役員側は実際の売買価額で譲渡所得の計算をします。 - 時価より高い金額で売買した場合
会社側は時価で資産を取得したこととなり、差額は役員に対する給与所得(損金不算入)となります。
役員側は時価で譲渡所得の計算をし、差額は給与所得課税となります。
4.会社から役員に対する資産の売買
- 時価未満で売買した場合
会社側は時価との差額は役員賞与として損金不算入
役員側は時価との差額は給与所得課税
5.社宅の提供
無償又は低額での提供の場合は、通常の賃貸料と実際に徴収した賃貸料との差額が役員に対する給与所得となり、課税されます。
6.役員が会社に土地を貸し付けた場合
会社側は支払った権利金や地代の水準によっては、権利金(借地権)の認定課税を受ける場合があります。
役員側は原則として実際に収受した金額について課税されます。