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「QR決済有料化への対応」

中小企業診断士 長瀬 勝好

 

PayPayが手数料有料化を10月から始めることが報道されました。導入済みの店舗としては「ついに来たか!」といった印象かと思います。必ず来ることは分かってはいたが、ニュースで報道として見ると、ドキッとしている方も多いのではないでしょうか。

 

肝心の手数料率はというと最低1.6%と一般的なクレジットカードの3~5%に比べて比較的低い水準になっています。ただ、「設備投資が不要」「手数料も無料」といった消極的な理由で導入した中小小売店などからすると、このタイミングでQRコード決済自体を止めるかを迷われるかと思います。その方々のために今回のコラムを記載しています。

 

非接触は社会からも求められている

2021年6月に経済産業省が公表した「キャッシュレス決済 実態調査アンケート」によると,事業者のキャッシュレス導入率は全体の7割を超えています。クレジットカードや交通系電子マネーを除く、QR等のコード決済だけでも5割以上が導入しています。業種で見ると、飲食業、小売業、観光業が高いという調査結果でした。

 

特にQRコードの決済利用者は急増しており、1年間で12%から43%と30ポイント以上の増加という別の調査結果もあります。若年層ではQRコードで払うことが普通であり、クレジットカードの方が馴染みは薄いかも知れません。特に昨今のコロナ渦の影響で非接触型の決済方法が社会からも求められているのが現状です。

 

高齢者にはキャッシュレスはハードルが高い

一方で導入していない事業者もあります。その理由を同アンケート結果から見ると、第1位が「客からの要望がない」、第2位が「手数料が高い」、第3位が「導入のメリットが不明/実感できない」となっています。QRコードの利用者の増加は明確であるにも関わらず、「客からの要望がない」という理由は、どういうことでしょうか?

 

この答えはアンケートの自由記載欄にありました。「高齢者が多く要望がない」などの回答が多くあり、高齢者にはキャッシュレス決済はハードルが高かったのではないかと推察されます。特にQR決済は、スマホに専用アプリを入れた上で、個人情報などの各種設定をして初めて利用できるようになります。自ずと利用できる人は限られてしまいます。

 

また客単価の分析から見ると、1000円~1万円未満の単価帯ではキャッシュレス導入比率が高く、逆に客単価が高い事業者では導入率が低いようです。高額商品などの取引であると、スマホ画面の数字だけでの支払いには心理的抵抗があるのかも知れません。

 

QRコード決済自体を止めるかを迷われている事業者の方々は、現在のお客様の「年齢層」「客単価」の2軸を判断の材料に使うと良いでしょう。

 

まとめ

ただ、体感としては飲食・小売店ではQR決済は必要不可欠なものと感じています。食事の支払時に、「QRコードで決済ができないか?」を尋ねてしまったことはありませんか。無意識に「QR決済ができるのが普通である」と常識が変わってきています。今後、財布がカバンの中で眠ったままの日も増えてくるでしょう。