中小企業診断士 栗田一正
総務省発表の令和2年通信利用動向調査(企業編)によると、「ホームページを開設している」と回答した企業は90.1%にのぼります。資本金1000万円未満の企業に絞っても71.5%と高く、中小企業でもホームページは“あって当たり前”になりました。
もはやホームページを持っているだけでは競合他社と差別化にはならず、改善を繰り返しながら適切に運用することが望まれます。Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを用いたデータ解析は、ホームページの運用や改善には欠かせない作業になりますが、データ解析に着手する前に念頭に置いておきたいことを紹介します。
データ解析の前にホームページの目的を確認する
大前提として、ホームページは経営戦略やマーケティング戦略を達成するための手段であり、何かしらの目的があるはずです。データ解析を行う前に、まずはホームページの目的を確認することをおすすめします。
ホームページの目的には、主に次のようなものがあります。
- 見込み顧客の獲得
- 商品販売による収益獲得
- 新たな人材の採用
- 信用の向上
- 企業ブランディング など
ホームページの目的がはっきりすると、見るべき指標がおのずと明確化します。例えば、見込み顧客の獲得が目的であれば、問い合わせの件数やメールマガジンの登録数などを確認します。商品販売による収益獲得が目的であれば、売上高や販売数量を見ることになるでしょう。
見るべきデータがわかると不要なデータを解析する時間が削れるので効率的です。また、改善策を立案するときに見当違いの方向へ逸れることを防げるメリットもあります。
データ解析の前に仮説を立てる
問題解決の道筋を探るときは「仮説思考」が有効であるといわれます。ホームページの運用・改善も例外ではありません。データ解析を行う前に、まずはホームページをひと通り閲覧し、現状の問題点について仮説を立てることをおすすめします。
仮説を立て、その仮説を検証するためにデータ解析を行い、問題の解決策を講じる。この手順でアプローチすると、次のメリットが得られます。
- データ至上主義では気づけない傾向や法則をつかめる
- 仮説検証により想像力が働き、改善に向けたヒントや打ち手を得やすい
- データを漠然と眺める時間がなくなり効率的に解析できる
アクセス解析ツールで取得できるデータはユーザーの行動履歴にすぎません。そのデータから改善策を見出すのは人間の想像力です。仮説を立て、データを用いて検証し、問題の解決策を検討――この繰り返しがホームページの運用・改善に大きな成果をもたらすはずです。
最後に
デジタル化が加速度的に進み、以前は取得が難しかったデータを収集できる環境が整いつつあります。データ活用がスタンダードとなることは想像に難くありません。ホームページの運用に限らず、日常的に得られるデータを取得・蓄積し、活用していくことは避けられないでしょう。しかし、データだけに固執するのも考えものです。人間としての視点を忘れず、数字には表れない本質を見つめることが企業の成長拡大には欠かせない要素だと思います。
以上