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中小企業の営業戦略を考える

中小企業診断士 青木 航

最近会社の売上が減少している。特に長年良好な関係で取引している顧客からの注文が徐々に減ってきている。しかし、実際はなぜ売上が減ってきているのかがわからなく、有効な改善策が見いだせず、日々を過ごしているといったケースは少なくありません。今回はそのようなケースで考えるべき営業戦略のポイントと改善策についてご案内します。

 

1.基本方針について

会社の売上が減少してくると「新規顧客の獲得」を目指した経営方針とするケースが比較的多いように感じます。業種業態やビジネスモデルによって違いがあるので、一概には言えませんが、新規顧客獲得に向けた企業活動は既存顧客への活動と比較して工数や時間、コストがかかり、生産性が低いのではないでしょうか。

 

具体的に見ていくと、営業方針の策定、アポイント取得、各種営業資料の作成、初回面談、顧客との関係性向上のためのフォロー活動など、それなりに工数を要することが多く、成果がでるまでに一定の時間とコストが必要となり、短期的には決して生産性が高いとは言えません。

 

では、既存顧客への活動はいかがでしょうか。上記のようなプロセスは最小限で抑えられ、限られた経営資源の中で効率よく売上や利益を獲得する可能性を見出せるのではないでしょうか。

今回は、中小企業が既存顧客からの売上を伸ばす活動のひとつの手段として「顧客深耕」についてご説明します。

 

2.顧客深耕とは

顧客深耕とは、顧客1社1社を深堀し、顧客との関係をより良好にすることを通じて、これまで以上に売上獲得を目指した戦略です。

 

3.顧客深耕を実現するためのポイント

とは言っても、何のプランもなくすべての既存顧客に対して実施するのは得策ではありません。まずは、顧客深耕戦略が実施できそうな既存顧客を抽出しましょう。自社への注文はあるが、まだまだ売上拡大の余地がありそうな企業へアプローチすることは必須です。では、それらはどのような基準で抽出するのでしょうか。まずは「顧客企業の規模」を一つの判断基準とすることができます。売上高が大きいことや事業所の数、従業員の数が多ければ、ある程度の企業規模があると推測できますし、日ごろの営業活動の中である程度把握できているではないでしょうか。

 

4.顧客把握

顧客深耕の戦略をとるには、日常的に行われている顧客とのコミュニケーション活動の中に、「情報収集の仕組み」を組み込むことが重要となります。情報収集を通じて、顧客のことをより深く把握していくのです。そして、どのような情報を集めるのかと言うと、状況によって様々ですが例えば以下のようなことが考えられます。

  • 顧客企業の経営方針や事業方針
  • 部門や部署ごとの方針や施策
  • 組織形態(部門や部署)
  • 社内で影響力のある方(キーマン)
  • 組織における意思決定プロセス  など

一例としてお示ししましたが、これらを把握する、もしくは把握するプロセスを経ることで個別の問題点や課題を共有する一助となります。結果として顧客企業をより広く、深く理解することは、競争力の強化や受注確度向上などの要素も相まって、取引拡大へ繋げることができるのではないでしょうか。

 

5.顧客深耕のアクション

しかし、情報収集するといってもすぐにできることではありません。まずは、こちらから顧客に対して目的をもった「情報提供」を行うことが入り口となります。そして、情報提供を通じた顧客とのコミュニケーションの中で、情報交換をすることを目指します。ここは、ヒアリング能力や経験値が求められる部分ではありますが、是非チャレンジしてみてください。それまで行っていたような、自社の会社概要や商品説明ではなく、顧客事業に関することの「情報提供」が興味を持ってもらえる可能性が高いと思いますので情報の「質」を高められるよう、日ごろから顧客事業にアンテナを張っておくことをおすすめします。

 

また、昨今ではe-mailやSNSなどに加えて、Webミーティングなど非対面での営業ツールも充実しておりますので、これらを活用して効率よく情報提供の「量」を確保する工夫も必要です。

 

6.最後に

今回は顧客深耕についてご説明してきましたが、これらのプロセスで何より大切なのは「継続して実施する」ことです。まずは、継続して取り組めるアクションを検討してみてください。

 

以上