今こそ、値上げ交渉を検討しましょう。

中小企業診断士 佐藤正樹

 

コロナ禍による世界の工場停止で物資不足や物流の混乱が起きていたところに、ロシアのウクライナ侵攻で供給不安が重なり、影響がさらに深刻になってきました。

 

価格面では日銀が3月10日に発表した2月の企業物価指数は前年同月比で9.3%も上昇しています。インフレ目標の2%に余裕があるように見えますが、建設業関連では木造用の構造材が1.5倍に値上がりしています。設備も物によっては2倍、3倍と聞くものもあり混乱が広がっています。コロナ禍はいずれ収束して正常化すると期待されていましたが、ロシアによる混乱は、物資不足による価格高騰が恒久化する可能性があります。

 

資材高騰を転嫁できていない企業に、値上げ交渉を真剣に考える必要があります。値付けは経営戦略と言われますが、値上げをいかに顧客に受け入れてもらうのか作戦が必要です。幸いにもどこの業界も値上げラッシュになっているので、顧客に値上げを交渉するには良いタイミングです。実際に私の関与先の企業も値上げを進めて成功しています。以下に手順を説明します。

 

 

(1)原価の点検

 まずは、商品毎に原材料、輸入・国内の輸送費などを直近の金額で洗い出して、本来はいくらで売るのが適正か確認しましょう。

 

(2)顧客と商品の分析

 どの顧客が上得意客で、どの商品で自社が儲けているのか確認しましょう。ABC分析という手法を用います。ABC分析の方法はここでは割愛しますが、顧客の分類であれば、A:収益の柱となる上得意客や戦略的なつきあいの顧客、B:並の顧客、C:利益が出ていないなどで疎遠になっても構わない顧客、などに分類します。

 

(3)商品戦略の見直し

 どの商品を値上げすべきか、どの商品は値上げできないかなどを検討します。独自商品であれば値上げの交渉においては有利です。一方、仕入れ先を簡単に切替られてしまう商品は価格交渉が難しい可能性があります。その際は、分量を少なくする、事前予約による定量発注で値引きするなどの方法などを提案しましょう。

 

(4)新商品への切替を検討

 値上げ交渉がしづらい業界では、従来品の入手が困難になったことを言い訳にして、新商品に切り替えると同時に値上げするなどの方法もあります。

 

(5)値上げ要請文の作成と通知

 顧客に対して商品値上げの要請文と価格表を作成しましょう。要請文には値上げの期日を記載します。なお、この期日は、多少余裕を持たせることにより、旧価格で顧客に在庫してもらい値上げのショックを和らげることも狙いの一つです。

 

(6)顧客への対応

 値上げの要請後に顧客から様々な反応が返ってきます。顧客の重要度順に合わせて根気よく対応して行きましょう。

 私の関与先の例であれば、A分類となる上得意客は、エンドの顧客に価格転嫁できる営業力があることが多かったためか、値上げの要請に対してクレームはほぼありませんでした。B、C分類の顧客からは多少のお小言がありましたが、幸いにも世の流れとして不承不承、受け入れてもらいました。

 

 

 以上、値上げの方法論を述べました。業界によってはこのとおりとはならないかも知れませんが、値上げラッシュのこの時期を逃すと自社が苦しい立場になるのでぜひ戦って勝ち取ってください。