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新たな学びのモデル「ラーニング・ピラミッド」をご存じですか

中小企業診断士 宮坂 芳絵

4月になり、新しいスーツに手を通した新入社員の姿を目にするようになりました。この時期は、新入社員研修なども多く開催され「学び」が注目されるタイミングでもあります。

 

新しい学びのモデル「ラーニング・ピラミッド」とは?

ところで、皆さんは「ラーニング・ピラミッド」というのを聞いたことがありますか?

 

ラーニング・ピラミッドは、文部科学省が昨年より取り上げて進める「新しい学びのモデル」として注目されるものです。アメリカ国立訓練研究所が発表した研究で、7つの学習の方法を学習の定着率順にピラミッド型に並べたものです。

 

通常、新入社員教育なども含めた学びの場では、講義・実技・ディスカッションなどのさまざまな方法で学習を行います。しかし、時間が限られていて状況では、より効率の良い方法を取り入れることが重要になります。

 

ラーニング・ピラミッドは、この様々な学習の手法と学びの定着率の関係を研究して作られたものです。具体的には、「講義」「読書」「視聴覚」「実演を見る」「グループで討議する」「実践による体験(経験・練習)」「他者に教える」の7つの方法です。

 

ラーニング・ピラミッドでは、「講義」「読書」「視聴覚」では受動的に教わっているだけで、学習定着率が低いことがわかりました。

それと比較して、「グループ討論(ディスカッション)」、「実践による体験(経験・練習)」、「他の人に教える」という3つの項目では高い学習効果が得られることがわかりました。

 

特に「他の人に教える」という手法では定着率が90%と高い結果になりました。

ちなみに、「グループ討議」では50%、「実践による体験(経験・練習)」では75%という結果です。(なお、この結果には根拠がないとの批判もありますが、能動的な学びが定着率につながるという考え方については、高い支持を得ています。)

 

能動的な学びと言えば「アクティブ・ラーニング」

定着率の高い学習の手法は「アクティブ・ラーニング」とも呼ばれ、能動的な学びへの参加を取り入れた学習法として位置づけられています。重要なことは「能動的な学びへの参加(自分から働きかけて学ぼうとする意欲や働きかけ)」という視点です。

 

アクティブ・ラーニングでは、一方通行の勉強ではないため、ディスカッションや経験などを重ねることで学習に責任感が生まれます。また、積極的に理解しようという意欲がわきやすくなる効果があります。さらに、双方向に「話す・聞く・考える・動く」といった活動を通じて、いろいろな人の知識・意見を取り入れ、自分の考えを柔軟にアップデートさせることにつながります。

 

実際にご自身の学びの経験を振りかえって見てください。能動的・・つまり自分から働きかけるという活動は「もっと学ばなくては‥」「理解を深めなくては・・」という積極的な意欲を引き出したな・・と思い出す方も少なくないのではないでしょうか。

 

まとめ

ここ数年は、コロナの影響もあり、オンライン講義やタブレット学習、動画学習などを活用する企業も増えました。

企業でも以前よりも学びの方法は増えましたが、「学びが定着しない」「本気になって学んでくれない」などの悩みも同時に増えています。

しかし、企業にとって人材育成は重要な課題の一つです。限られた時間・コストの中で何ができるのか・・?この機会に、効果的な方法を模索してみてはいかがでしょうか。

以上