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レジなし小売店と万引きの関係

中小企業診断士 榎本博之

5月下旬に東京ではようやく1年半ぶりに営業について何の規制もなくなった。未だ感染者数の増減には波があるものの、コロナ対策については新たなフェーズに入ってきたと言えるのではないだろうか?

小売業では、コロナ禍によってお客様が売場に期待することや、目的は大きく変化したが、同時に働く人たちの意識や考え方も大きく変化した。安心した買い物に向けたお客様への配慮はもちろんだが、働く人たちが感じる不安を解消し、やりがいを持って働ける環境づくりが魅力ある売場への進化にもつながっていくと考える。

 

レジなし店舗、Amazon GOと万引き

レジなし店舗としてアメリカで約30店舗を展開している「Amazon Go」。2022年2月にアマゾン傘下のスーパー「Whole Foods Market」にも、レジなしの「Just Walk Out」システムが導入された。Amazon Goでは比較的小型店の展開であったが、いよいよスーパーのような大型店にも展開が始まった。

大型店への展開は店内で働く従業員を削減し、生産性向上だけを図るのが目的ではない。

Just Walk Outシステムを使って、店内での買物行動と決済について、人手を使わず行うことで、従業員の負担や不安を軽減する大きな取組みになると考えられる。その負担や不安として大きいものが「万引き」などの店内不正である。

最近アメリカでは万引きを軽犯罪と呼ぶには違和感があるような凶悪でエスカレートした事件が続発している。ニューヨークやカリフォルニアなどの都市部では万引き犯罪により閉店に追い込まれるドラッグストア、スーパー、ディスカウントストアが増えている。

 

万引き対応は負担が大きい

日本でも、セルフレジや買物袋の有料化によるマイバック持参の仕組みを悪用した店内不正が増加傾向にあり、たびたびニュースでも取り上げられている。

万引き対応の負担や不安が大きいのは、捕まえておしまいというでは済まないからだ。事件が発生すると、万引き犯を警察に引き渡して終わりではなく、調書作成等の協力が求められ、警察署に同行し長時間拘束される場合が多い。その間は業務に支障をきたす。また、犯罪への対応という点で、ポジティブ要素よりもネガティブ要素が強く、心身のストレスも発生する。

この点を踏まえて、店内不正に対処する点で重要なのは犯人を捕まえることではなく、犯罪を起こさせない店内の環境づくりと考えられている。事件発生時の負担をしたくないばかりに店内不正を見過ごせば、店舗が犯罪の温床となり、アメリカのように最悪閉店に追い込まれることになりかねない。

 

万引きできないお店は本来の店舗機能を高められる

大切なのは「このお店では万引きができない」と思わせることなのだ。

これは、他の来店客の安心感にもつながる。犯罪のスキをつくらないお店が、お客様とのコミュニケーションを生み出し、店内の訴求向上にもつながる取組みに専念できる。レジなし店舗では、誰もが商品を手に取り、そのままお店の外に出ても問題がない。それに加えて犯罪のスキが無くなる。

結果的に、働く人たちが犯罪を防ぐためのアンテナを張る必要がなくなる。もちろん、レジなし店舗では店内のカメラやセンサーなどを使って、店内の回遊や行動から販売促進や接客アプローチなど様々な取り組みに活用できるようになる。

しかし、一番大切なのは働く人たちの持ち味を生かして、その取組みに専念できる環境整備こそが最大のメリットであると筆者は考える。機械やシステムでできる取組みは徐々に移行を進めながら、本来の店舗機能を高めていくために人がしなくてはならないこと、人しかできないことがこれからの魅力づくりには不可欠な要素になっていくだろう。

これまでの作業を固定概念として捉えるのではなく、新たな仕組みや設備を活用することでお客様の来店の楽しみにするという視点はアフターコロナの売場づくりにおいては顧客支持の源泉となってくる。

以上