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顧客満足度の測定─NPSやCESを活用したアンケート調査─

中小企業診断士 木村孝史

今回は、商品・サービスの満足度を把握するための調査を検討されている事業者様に向けて、NPSやCESを活用した効果的なアンケート調査についてお伝えします。 

 

 

◇顧客満足度をさらに向上させたいとき─NPS(Net Promoter Score推奨者正味比率)の活用

NPSは、“あなたはどの程度満足していますか?”ではなく、“家族や友人にどの程度勧めたいですか?”と質問する形で、商品・サービスの満足度やブランドに対する信頼感を測定する方法です。

 

具体的には、アンケートの質問回答の推奨度の程度を0から10までで設定し、9か10の回答をした方を推奨者、7か8は中立者、6以下は批判者として、全体に占める割合(%)をそれぞれ算出します。NPSは、推奨者から批判者の割合を差し引いた比率です。

 

こだわりの商品を取り扱っていたり、独自性の強いサービスを提供していたりする中小企業においては、注力している既存商品・サービスの定期的な評価や新規商品のテストマーケティングで活用することをお勧めします。

 

筆者自身、イベント会場で新サービスの体験をしていただいた方に、非日常の環境下で甘い評価を排除しホンネを引き出す質問としてこの推奨度を活用したアンケートを実施した経験があります。ただ、推奨度の質問は責任感を伴い即答しにくいため、留意点として、全部を推奨度の質問にせず、顧客の属性や志向など簡単な質問から始めて、徐々に回答者自身への質問に推奨度の質問を織り交ぜ抵抗なく回答できるように設計することです。

 

留意点のもう一つは、異なる店舗でも同じ商品・サービスを提供し顧客が類似しているのであればNPSでの比較ができますが、一方は既存顧客の利用が多い店舗で他方は不特定多数が利用する店舗となるようであれば、店舗間で比較するのでなく店舗別で継続してNPSの推移をみていく形で活用することです。

 

 

◇顧客の離反防止や維持を図りたいとき─CES(Customer Effort Score 顧客努力指標)の活用

CESは、“どの程度満足して利用できましたか?”ではなく、“どの程度負担感なく利用できましたか?”と質問する形で、商品・サービスを利用する際の不満足感やブランドへの信頼感を下げる要因を測定する方法です。具体的には、アンケートの質問回答の不満足の程度を1~7までで設定し、「1 全く負担感はない」「2 負担感はない」の回答をした方をTOP2、「3 あまり負担感はない」「4 どちらとも言えない」は中立、「5 やや負担感がる」「6 負担感がある」「7 非常に負担感がある」はBOTTOM3として、全体に占める割合(%)をそれぞれ算出します。CESは、TOP2からBOTTOM3の割合を差し引いた比率です(NPSと並行してアンケートをとる場合は0から10まで設定して実施する場合もあります)。

 

CESは、大企業の予約・サポートセンターへの問合せ後のアンケート協力依頼で見受けられますが、成約までのリードタイムが長い商品を取り扱っていたり、複数店舗間でのサービス平準化が必要であったりする中小企業でも効果的です。特に、近年のコロナ禍で対面でのサービス提供が困難となりオンライン中心での提供にシフトした業態では、リモートによる利便性が増えた一方、顧客側に情報収集や手続きの負担を強いている面もあるため、不満足度の観点からの顧客の声の収集をお勧めします。

 

不満足度を把握する理由は、一般的に快適さや感動などのプラス面よりも、イライラや面倒などマイナス面の方が顧客の印象に残りやすいからで、事業拡大に伴い取り扱商う商品・サービスや新規従業員を増やしている企業においては、手間や労力などで顧客に不満足要因が発生していないかどうか、発生しているようであればまず減らすことが離反防止や信頼回復につながります。

留意点は、問合せから商品の説明、支払や受取まで購入に至る過程で、担当者による説明の難しさや操作方法のわかりにくさなどで負担を感じたかどうか、各工程を切り分けた質問を設計し、不満や不快感のマイナス要因を発見しやすくすることです。 

 

NPSでもCESでも、僅かなアンケート調査結果を受けて、投入した商品・サービスやその提供方法の改廃をすぐ判断するものではありません。NPSやCESも有効な方法の一つとして捉え、普段から定点測定を継続して顧客の声を把握し、満足や不満足の要因を踏まえて商品・サービスを磨き上げ、効果的な営業販促の方法を探っていくことがポイントです。

 

以上