· 

「心理的安全性」におけるリーダーの心構え

中小企業診断士 山浦直晃

 

近年のDXの進展により、人事の領域でもデータ分析が主流になりつつあります。その具体的取組の1つとして、「ピープルアナリティクス」があります。「ピープルアナリティクス」とは、人事データを分析・活用して、組織が抱える課題を解決へと導くための手法を言い、Google社 のピープルアナリティクスチームが有名です。彼らは、「ピープルアナリティクス」を活用して「効果的なチームとは何か」を研究し、エンジニアや営業のチームを追跡・調査しました。その結果、「効果的なチーム」を構築するための重要な要素として「心理的安全性」に注目しました。

 

ハーバード大学教授・エイミー・C・エドモンソン氏によると、心理的安全性とは「このチーム内では、対人関係上のリスクをとったとしても安心できるという共通の思い」と定義されます。メンバー同士の会話でどのような発言をしたとしても、メンバーから嫌われたり、関係が壊れたりすることがなく、安心して自分の意見や考えを言える状態と言い換えることができます。

 

心理的安全性は、近年の日本においても、テレワークの進展により対面で仕事をする機会が激減する中で、どのようにして生産性を上げるチーム作りを行うべきか、悩み模索しているリーダー層から注目されています。心理的安全性にご興味がある方は、エイミー・C・エドモンソン氏の著書「恐れのない組織」をご一読いただくとして、本コラムでは、本書籍で紹介されている、心理的安全性の土台となるリーダーの心構えをご紹介します。

 

1.土台を作る

仕事を進めていくうえで、失敗や予想外の出来事を恐れるのではなく、失敗や予想外の出来事は発生するものであると考え、ミスや事故が発生してしまっても、それと向き合い率直に話し合う土台(風土)をつくることです。(失敗を恐れる従来の思考をフレーミングと呼ぶのに対して、これをリフレーミングといいます)

 

2.参加を求める

そのサービス自体にどんな問題があったかを、各スタッフに自発的に考えてもらうようにします。失敗を追求したり個人を責めたりしません。「あなたのお客様は、あなたが目指した通りに満足してくれましたか?」と問いかけて自発的に考えることを促すことで、主体的に改革に参加することを浸透させます。

 

3.生産的に対応する

これまでの取り組みにより、スタッフが率直に発言する土壌ができても、それは心理的安全性の最初の1歩にすぎません。スタッフからのどのような発言に対しても、感謝し敬意を払う態度と、部下からの報告の責任を問わないことがリーダーには求められます。そのためには、明らかな違反を事前に定義し、それに抵触した場合は厳しい制裁措置を取ることを周知することが重要です。公正かつルールが明確になるだけでなく、組織が方針・価値観に本気であることを示すことで、スタッフを正しい方向へ行動させることに繋がります。

 

以上