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ベンチャー企業とは?意外と知られていない公的なベンチャー支援

中小企業診断士 丸田佐和子

「ベンチャー」とは

ベンチャーは「アドベンチャー(adventure)」という言葉に由来する和製英語です。日本では「成長過程にある比較的新しい企業」を指す言葉として広く認知されています。ベンチャー企業の公式な条件は明確に定まっていませんが、特徴としては、設立から間もない主にスモールビジネスを扱う小規模な企業を指すのが一般的です。

 

筆者が住む自治体の産業振興課に「ベンチャー企業」の考え方について問い合わせてみたところ、設立からの年数は問わず、老舗企業でも新規事業として新たなビジネスを扱っていれば、ベンチャー企業として、自治体の支援メニューが使えるとのことで、非常に幅広い意味で使われていることがわかります。自治体間で大きな違いはないと考えると、国内の中小企業の多くは、「ベンチャー企業」になることができます。

 

新型コロナウイルスによるビジネスモデル転換

新型コロナウイルスにより既存事業に大きな影響を受け、ビジネスモデルを見直し、新たな製品、新たな市場開拓を考えている中小企業は少なくありません。

 

今までtoB製品しか扱っていなかったが、toC製品を試作している、店舗販売のみであったが、EC販売を始めた、などその内容は多種多様ですが、新規性が高く、革新的なモデル転換や事業再構築であれば、「ベンチャー」といっても過言ではありません。

 

ベンチャー企業に対する公的な支援

公的な中小企業支援の中で、創業支援メニューというと、創業相談や創業融資、創業助成事業(東京都/助成金)、特定創業支援などがあります。概ね創業から2~5年以内で活用できることとなっています。ではベンチャー支援ではどうなっているのでしょうか?

 

上記で述べたとおり、ベンチャーは幅広く使われている用語なので、「ベンチャー」に特化した支援というのは多くありません。しかし、新事業創出を図りたい中小企業であれば、話題の「事業再構築補助金」でも対象事業者となりえますし、自治体が創業者向けに提供している支援・サービスの一部も対象となるものがあります。

 

ベンチャーにおすすめの公的支援

筆者がおすすめする支援メニューは以下の2つです。一つ目はベンチャー施設など公的支援機関が運営している施設への入居サービスです。割安の価格設定になっているうえに、入居者同士の交流機会、専門家による伴走支援など手厚いサポートが提供されています。

 

二つ目はオーディションです。ビジネス(起業家)オーディションとか、ビジネスコンテストなど呼称、形式は様々ですが、最近は多くの自治体で開催されています。応募のメリットとして、賞金などの副賞もありますが、自治体や協賛企業によるプレスリリースなどによって、知名度の向上が期待できます。また自治体、協賛団体によるその後の継続的な支援が受けられることもあります。実際の応募企業に一番のメリットを尋ねたところ、審査員による客観的な意見、アドバイスという回答が多く、自社のビジネスプランの見直しやブラッシュアップに効果があるようです。

 

上記の他にもオープンイノベーションの実現を支援するマッチング機会の提供やクラウドファンディング活用にかかる支援、各種セミナーや交流会の開催などを実施している自治体もあります。

 

情報収集が重要

公的な支援は原則、ホームページや紙媒体で発信されています。誰でもアクセスできますが、中小企業自ら情報収集しなければその情報にたどり着くことはありません。もしくは、同業者や知人などから情報交換の中で得ることもあるでしょう。知っている人しか利用できていないのが実態ですので、情報収集が非常に重要ということです。

 

定期的な情報収集には、自治体や支援機関のメールマガジンの登録なども有効です。創業や新事業の創出に関する支援は国の政策もあって、今後も強化される方向性にあります。他人事ではないと、ぜひ一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

 

以上