· 

冷凍食品市場の伸びからコロナ禍の対応を考察する

中小企業診断士 中島誠

冷凍食品の市場が伸びています。コロナ禍により自宅にいることも多くなり、家で手軽に食べられる冷凍食品の需要は増えています。ただし、需要が増えただけでは事業は伸張しません。冷凍食品の味が上がったことも深く関係しています。

 

日本経済新聞の記事によれば、冷凍食品の21年の市場規模は8032億円と10年で28%拡大し、25年度には9388億円に達すると見込まれています。

大手スーパーが冷凍食品だけを販売する新業態を開業しました。そこでは総菜やスイーツ、冷凍食材など、国内最大級の約1500品目を取りそろえているそうです。

 

その他にも、百貨店が地域の名店のメニューを冷凍食品にして販売したり、飲食店が自社のメニューを冷凍食品として販売したり、冷凍弁当の定期宅配事業を拡大する動きもあり、業種を越えて冷凍食品を販売する場が拡大しています。

 

過去の冷凍食品はおいしくなかったと思っている方は多いのではないでしょうか。しかし昨今の冷凍食品の味は決して悪くない、食べたけれど冷凍食品とはわからなかった、等の経験をした方も多いのではないでしょうか。冷凍食品の質が上がったことも市場の拡大に大きく寄与しています。

 

質の向上を実現した要因として、冷凍技術が進歩したことが上げられます。最新の冷凍技術は「急速冷凍」と呼ばれるものです。簡単に説明すれば、過去の冷凍技術では液体が凍る時に発生する「氷結晶」が食材の細胞膜を破ることで味が落ちていましたが、急速冷凍により「氷結晶」による細胞膜の破損を防止できるようになったため、冷凍しても食材の味を落とさず保つことができるのです。

 

上記の冷凍食品と同じようなことが、他でも起きてはいないでしょうか。

かつては良くなかったこと、できなかったことが最新技術によって可能となったことはないでしょうか。皆様の事業に関わる技術が進歩してはいないでしょうか。

一度考えてみてください。

 

現在コロナ禍で収益が悪化している企業は多く、新たな事業を考えている方も多いのではないでしょうか。過去検討したが諦めた事業も新しい事業の選択肢に加えてみてください。

ご自身が考えている以上に技術が進歩していて、これまでできなかったことが実現できるかもしれません。

1つだけ注意点をお伝えします。最新技術があったとしても技術の導入だけに終わってはいけません。冷凍食品からでもわかるように、最新技術は他の企業でも利用することが考えられ、競争は激しくなります。必ず自社の強みを加えて、自社ならではの新しい事業を行うことが大事です。

 

以上