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様変わりした小規模事業者持続化補助金について

中小企業診断士 中保達夫

 

小規模事業者・個人事業主の販路拡大をサポートしてくれる小規模事業者持続化補助金。当補助金において、今年度申請内容における大きな改正が行われた。改正内容の詳細は後ほど記載をするが、8月31日に今年度分最初の採択発表があったので、まずそちらに触れておく。中小企業庁のHPによると応募事業者数は11,279件、採択者数は7,098件。採択率は62.9%という結果となった。

 

ちなみに、昨年度に実施された小規模事業者持続化補助金低感染リスク型ビジネス枠第6回分は応募事業者数11,721件、採択者数は8,040件 採択率は68.5%。小規模事業者持続化補助金一般型第7回分は、応募事業者数9,339件、採択者数は6,517件 採択率は69.7%という結果であった。

この数値を踏まえ、今回からの変更項目を踏まえた小規模事業者持続化補助金を検証してみる。

 

昨年度までの小規模事業者持続化補助金

昨年度までの小規模事業者持続化補助金は、コロナ禍を踏まえて一般型と低感染リスク型ビジネス枠の2つが存在した。一般型はこれまで同様に、「小規模事業者等が、地域の商工会または商工会議所の助言等を受けて経営計画を作成し、その計画に沿って地道な販路開拓等に取り組む費用の2/3を補助するもの(補助上限枠は50万円)」となっている。

 

低感染リスク型ビジネス枠は「小規模事業者が経営計画及び補助事業計画を作成して取り組む、感染拡大防止のための対人接触機会の減少と事業継続を両立させるポストコロナを踏まえた新たなビジネスやサービス、生産プロセスの導入等に関する取組を支援するもの(補助上限枠は100万円)」が主旨となっており両補助金の棲み分けはされていた。

 

今年度の大きな変更点

コロナ禍であった昨年度・一昨年度2パターンが存在した小規模事業者持続化補助金は、今年度から再び一般型のみに戻った。ただし、その中で[賃金引上げ枠][卒業枠][後継者支援枠][インボイス枠]の新たな4支援枠が加わった。

 

また、これまで補助上限額が100万円だった[創業枠]も新たな[賃金引上げ枠][卒業枠][後継者支援枠]同様に補助上限額が200万円まで引き上げられた。[インボイス枠]は補助上限額が100万円となっている。また、各枠にはそれぞれタイトルに付随する申請条件をクリア出来れば申請可能となる。

 

ここまで、聞くと一定の条件を満たす必要はあるが、補助上限額がこれまでの4倍となり、これは便利な補助金となったと思った事業者が多いかもしれない。しかし、新たな枠が加わったと同時に、思わぬ制約条件が加わった。

それは「ウェブサイト関連費は、補助金交付申請額の1/4を上限とする」「ウェブサイト関連費のみによる申請はできない」という条件である。

 

当方も、支援先や各支援機関の窓口相談で小規模事業者持続化補助金に関する相談を受けることがある。特に補助金申請〆切1~2週間前は、事業者からの相談が目に見えて多くなる。これまでの相談経験から、ほぼ半数以上の事業者はHPやECサイトの作成、WEB広告の実施が小規模事業者補助金の主流となっていた。

 

そのため当初は、金額の増加に伴い大きく増えるであろうと予想された今年度最初の小規模事者持続化補助金における応募事業者数は、この制約条件もあったのか想定したほど増えてはおらず、採択率も例年通りのものであった。

 

留意すべき点

小規模事業者持続化補助金は、現在のレギュレーションで今年度中にあと3回公募が行われる予定である。これはあくまでも当方の所感であるが、各回の応募総数・採択事業者数とも初回と似たような数値になるのではないか。

 

HPやECサイト作成に関する補助金として、IT導入補助金というものがある。こちらはここでは詳しく触れないが、今年度はこれまでよりも利用しやすくなった感がある。

 

もし、HPやECサイト作成で補助を受けたいのであれば小規模事業者持続化補助金ではなくIT導入補助金を利用して欲しいという国の方針が見え隠れする。

 

補助金は、国の税金を活用して実施している事業であることは言うまでもない。だからこそ、不正事業者が現れないように担当庁は厳密に要項を作成・審査をしている。それを守って、国が求める内容にそぐうような申請を事業者には行っていただきたいものである。

以上