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中小企業のDX成功ポイント

中小企業診断士 馬場 正博

 

コロナ感染症の流行が長引く中で、デジタル化でビジネスモデルを変革するDXに取組む企業は増えています。今年の中小企業白書の中でも、中小企業の事業方針の中で、デジタル化の優先順位が高いとアンケートで回答した事業者の割合は、2019年の40.3%から2021年は62.5%と過半数を超え、コロナ収束時の想定では66%にまで至っています。また、実際にビジネスモデルの変革や競争力強化をめざしDXに取組んでいる事業者は10.2%、デジタル化による業務効率化やデータ分析に取組んでいる事業者は46.7%、アナログからデジタルツールを利用した環境に移行している事業者が34.9%、まったくデジタル化の取組みができていない事業者は8.2%という結果(2021年時点)でした。

 

経済産業省、中小企業庁は中小企業のDXを推進するため、各種補助金のほかにも様々な施策を実施しています。

 

例えば、「DXセレクション」は、経済産業省が中堅・中小企業のモデルケースとなるような優良事例を発掘、選定して表彰しているものです。2022年度のグランプリは、大阪の山本金属製作所です。10年前までは金属部品加工の一介の町工場だった当社は、IoT・AIによる現場改善を起点として、自社の部品加工ラインをロボットにより無人化するまでとなり、そのノウハウをもとに他の事業者へIoTや人材育成のソリューションを提供するビジネスモデルの変革をなし遂げ、さらなる進化を目指す目標をかかげ、宣言をしています。そのほか、各社の取組み内容はさまざまで、道半ばのものも含めて取組み事例が紹介されています。

 

また、経済産業省のホームページでは、中堅・中小企業向けに「デジタルガバナンス・コード実践の手引き」という資料が公開されています。タイトルがわかりにくいのですが、内容は中堅・中小企業向けのDXの手引きとなっていて、DXにどのように取組めばよいか悩む社長には参考になる資料です。13社の中小企業のDX取組み事例が紹介されているほか、事例から分析した中小企業のDXの進め方や、DX成功のポイントが紹介されています。詳細は本文を読まれることをおすすめしますが、そこに紹介されている中小企業DX成功のポイント5つを以下のとおり簡単に解説します。

 

1)経営者の気づきとリーダーシップ

 まず、社長が事例やセミナー、経営相談などで気づきを得るところがポイントです。そこで、経営戦略をしっかりと見つめ直すことが重要です。方向性を定めて社長が旗を振っていかないと取組みは、前に進みません。

 

2)まずは身近なところからはじめる 

 いきなり難しいことをやろうとしても上手くいきませんし、続きません。例えば、会計、経理など業務効率化、そのデータを経営判断に活用するようなところから始めて、ITリテラシーを高めていくことが重要です。

 

3)外部人材の活用、デジタル人材確保

 自社独自のデジタル化の取組みを進めてステップアップしていくためには、ITに強いアドバイザーやITリテラシーの高い社員の力が必要になります。外部の専門家活用や、若手人材の育成や採用がポイントです。リソースの限られる中小企業にとって、公的支援機関などのサポートを上手に使うことをおすすめします。

 

4)ビジネスモデル変革や組織の変革に取組む

 デジタル化は目的ではなく、手段であることを忘れないこともポイントです。ロボットやAIなど最新技術を導入して効率があがったとしても、その先に競争力を維持、向上させる仕掛けがなければいずれ陳腐化してしまいます。これまでのビジネスモデルや組織体制をゼロから見直し、生まれ変わるにはITがどう役にたつのか、といった目線が重要です。

 

5)5年〜10年の中長期で、地道な試行錯誤も覚悟して取組む

 どんな成功事例でも、1〜2年の短期間で会社が生まれ変わるDXを成し遂げるようなことはありません。むしろ、試行錯誤を繰り返した結果、自身でも想像できなかった姿に生まれ変わったという例が大きく成功しています。そこに至るまでは、早くても5〜10年かかると覚悟してあきらめずに粘り強く段階的に取組むことが必要です。途中、ステップアップのための投資は補助金などの支援策も上手く活用していくことが資金力のない中小企業にとって、必須条件と言ってもよいでしょう。

 

御社も商工会議所などの支援機関や国の支援策を上手に使って、デジタル化からDXへと飛躍の扉を開けてみてはいかがでしょうか。

以上