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補助金の落とし穴

中小企業診断士 佐藤正樹

 

事業再構築補助金や持続化補助金など中小企業向けの補助金がたくさんあり、上手に活用している企業も多いことと思います。私は補助金の申請を直接ご支援することはほとんどないのですが、補助金に採択されたけど大変という相談を受けることがあるので、スムーズな活用のための注意点をご案内します。

 

■申請前

(1)補助金ありきの計画は御法度

 補助金ありきの計画では頓挫する可能性があります。採択されたものの、実績精算で項目別に否認されることがあり、実際に1000万円の金型が否認された事例を聞いたことがあります。この事例ではその分の補助金の入金はありませんので自己資金でも回る事業計画を立案する必要があります。

 採択時と実績精算で見解が変わってしまうことはまれにあり、これは一次受託者と補助金事務局の運営とが分かれていることや、運営中に要綱の解釈が変わることがあるためで、対策のしようがありません。

 

(2)詐欺まがいの案件には近づかない

 ホームページ作成業者などが補助金の申請を代行すると営業をかけてきて、実態のないホームページを作って補助金を折半する事案があります。犯罪行為であり、事務局も把握しているので逮捕される可能性もあります。そのような誘いはきっぱりと断りましょう。

 

■採択後~実績精算

(3)仕入れは一括発注で

 補助の対象事業を実行するために資材や広告などを発注することになりますが、発注する毎に見積書、注文書、受領書、支払明細、通帳の写し、クレジット明細などの書類を揃える必要があります。アマゾンなどで都度購入すると発注品目事に先の書類に手書きで注記した上でWeb画面にいちいち登録する羽目になります。可能ならば、通常の業務とは分けてどこかの企業にまとめて発注すると精算の作業が減らせます。

 

(4)支払は振込で

 支払はクレジットや現金払いではなく、補助事業に関わる物を区分して振り込みましょう。クレジットで支払ってポイントを稼ごうとしても、ポイントは補助金の支給額から控除されますし、精算が面倒になります。高額な金額の現金渡しについても補助金では御法度です。領収書があっても実際の授受があったか証明できません。振込手数料がもったいないという方がいますが、それも補助金をもらうための経費と割り切りましょう。

 

 以上、補助金に関して、よくご相談を受けたり、見聞きした事例をご紹介しました。