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リモートワークでのコミュニケーションの取り方

中小企業診断士 長瀬勝好

 

コロナ禍で長きにわたって続いてきたマスク着用も緩和されるご時世となりました。それに伴い、一部企業では感染症対策の3本柱である「マスク着用」「会議室パーティション」「多人数での会食規制」を撤廃する企業も出てきています。多くの企業で社内ルールの見直しが求められる大きな転換期と言えます。

 

働き方も変化しつつあります。コロナ禍で一気に浸透したリモートワークですが、これを止め、出社を義務付けることを検討する企業も増えています。従業員側からは「勤務時間に縛らず柔軟な働き方ができる」「苦痛だった通勤時間を有効活用できる」、企業側からは「交通費や賃料などの固定費が削減できる」「多様な人材が雇用できる」といった双方にメリットがある制度が、なぜ、このように逆行する動きが生じているのでしょう。

 

理由として、多くのマネジメント層がリモートワークでの部下の管理に苦戦をしているためです。部下が真面目に働いていないのではないかという不信感が強まり、部下のモチベーションを落としているケースもあります。これを裏付ける統計として、キャリアや働き方の研究や調査を行う「Job総研」の「2023年リモートマネジメント実態調査」があります。この統計を見ると、マネジメント側で「リモートマネジメントで課題がある」と68%が回答しています。内訳は「メンバーの業務進捗の把握」が48%、「メンバーの理解度や成長度がわかりにくい」が38%と高く、「メンバーとのコミュニケーション」がリモートワークでの管理の最大の課題と言えます。

 

とは言っても「全員が出社して顔と顔をあわせた働き方に戻せば良い」という単純な話でもありません。コロナ禍でも生産性の維持・向上が実現できた企業は、リモートワークが定着化しており、今後も継続することは確実です。そのような背景から今回はリモートワークにおけるコミュニケーションの取り方で特に効果のあることを2つ紹介します。

 

(1)マネジメントが自分から積極的に発信する

「報・連・相」が大切であることは皆が知っていることです。しかし、リモートワークでは、部下からの発信を「待っているだけ」だけでは実現できません。仕事の納期を決めた段階で、報告や連絡や相談の時期をマネジメントが仮置きして発信するのです。例えば3日間でやり終える仕事でしたら、1日目は部下に任せ、2日目の朝に「何か困っていることはないか?」とチャットツールなどで連絡することです。また、3日目はWEB会議の打合せ予約を入れておき、会話の中で詳細に把握するなどです。

 

(2)チャットツールのスタンプ機能を活用する

コミュニケーションの溝を埋める手段としてSlackやChatWorkなどのチャットツールを導入している企業が多いです。ただ、メッセージ機能やファイル機能だけを利用するのは勿体ないです。スタンプ機能を活用してみてください。喜怒哀楽の感情はメッセージでは表現しにくいですが、スタンプなら容易です。また、部下同士で相談しているメッセージに「なるほど」「同意」などのスタンプを押すことで、案に見ていることや自分の意見を伝えることができます。「スタンプで伝えるのは不謹慎」という社風の会社もありますが、コミュニケーション補完機能としては非常に効果が高いです。トップダウンで活用促進をしては如何でしょうか。

 

以上