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人を選定することの難しさ

中小企業診断士 中保達夫

 

中小企業診断士という資格を取得して、今年でちょうど10年目を迎える。中小企業診断士という資格は、取得すると所定の要件を満たして5年に一度更新をする必要がある。私は、先日に2回目の更新作業をようやく終えたばかりである。

 

ありがたいことに、中小企業診断士の資格を取得してからは、各所からお声がけを頂き、色々な仕事に関わることができている。※この記事の執筆も、その1つでもある。また、ここ数年は私の方から仕事をお願いするという機会も増えたきた。

 

そういった経験を踏まえ、自身のこれまでを振り返りながら人を選定することをテーマに今回書かせて頂く。

 

誰に何をお願いするのか

中小企業診断士は、専門家として公的機関の支援に携わっている方も多い。その中で、公的機関がどのような基準で専門家を選定しているのかを考えてみる。もちろん支援を求める事業者ありきのため、その事業者が求める内容に応えられる支援ができるかが第一前提となる。また、求められる支援に対する知識や経験を備えているかも重要な要素であろう。

 

ただし、私が最近専門家に事業者支援を依頼する仕事に関わることによって、必ずしも前記しただけの条件では足りないことがわかった。それは、支援事業者に嫌な思いをさせない・同じ目線で関われる支援ができるかという姿勢があるかということである。かなりデフォルメをかけて記載するが、私が経験した事例を紹介したい。

 

依頼してはみたが・・

とあるテーマの支援で、私に専門家を選定して欲しいという依頼がきた。その依頼内容を踏まえ支援専門家を探していたところ、経歴書を見て条件に合う方がみつかったので、その専門家に依頼をすることにした。支援回数は、事業者が希望すれば回数と時間を掛けてじっくり支援をしていただいても構わないとの連絡も頂いていた。

 

ところが、いざその専門家に支援を任せたところ、1回の面談で終わってしまった。その時は、私の選定がうまくいかなかったと思った。少し経つと、また同じような案件依頼が来たので、改めてその専門家にお願いすることにした。前回の反省も踏まえ、事前に事業者情報を詳細にその専門家にも伝えた。だが、またも1回の支援で終わってしまった。提出いただいた支援報告書の内容を見る限りは、それほど相性が合わなかったようでは無く、また私のマッチングがうまく行かなかったのだと反省をした。

 

なぜそんな事態になったのか

2回連続で支援が継続できなかった反省もあり、私の方から事業者に電話で事後アンケートを取ることにした。そこでようやく、なぜ支援が続かなかったかが判明した。この事業者からその専門家の支援に対して、「自分は専門家だ、支援してやってる感が強く伝わってきた」という感想(クレーム)を頂いた。「こういうこともアドバイスが欲しい」と伝えると、「それは有料となる」等報告書には全く記載されていない話も聞いた。

 

気になったので、最初にお願いした事業者にも同じアンケートを取ったところ、似たような回答が返ってきた。もちろん、この専門家には2度と支援をお願いすることは無くなった。ただし、本人の名誉もあり事業者アンケートの結果は伝えていない。

 

振返って自分はどうか

私自身も支援機関を中心に、専門家派遣を依頼されることは少なからずある。自分が専門家を選定してきた経験を踏まえ、私自身はこれまで以上に丁寧に、事業者と目線を合わせながら専門家支援に対応するようになった。

 

もちろん、選定してくれた方の顔つぶさないことをいつも心掛けている。また、事業者にはこんな支援で良かったでしょうか、何か他に聞きたいことは無かったでしょうかと必ず確認するようにしている。人に任されるということの責任感を常に意識しながら、中小企業診断士という資格に恥じない支援を今後も心掛けていきたい。

以上