中小企業診断士 大口憲一
最近、「健康経営」に取り組む事業者が増えています。
今年の3月に発表された健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)の認定数は16,733件。
この制度が始まった2016年の認定数は318件だったので、制度が開始してからわずか8年で52倍のペースで増えています。
このことからも、近年とても注目されている分野であるといえます。
そもそも健康経営って何?
さて、最近注目されているとはいえ、まだまだ知らない人が多い「健康経営」。
その定義を一言で表すとすると「従業員の健康を経営的な視点で捉え、戦略的に実践する経営手法」となります。
ここでのキーワードは「経営的」と「戦略的」というところです。
それぞれのキーワードについてまとめてみると、
「経営的」
- 従業員の健康増進に関する取り組みを「コスト」ではなく「投資」と捉え、投資に見合ったリターン(メリット)を得る
- 一従業員の取り組みではなく、企業全体で「組織的」に取り組む
「戦略的」
- 闇雲に健康課題に取り組むのではなく、ゴール(目標)を設定し、中長期的視点で取り組む
- 1回やったら終わりでなく、PDCA(計画→実行→評価→改善)を意識して取り組む
こういった意識で企業が従業員の健康に取り組んでいくというのが健康経営の推進に重要です。
健康経営に取り組む背景
さて、健康経営がここまで広がった背景は何なのでしょうか。
色々な視点でまとめることができますが、ここでは「従業員の活性化」「保険費の増大」という観点で説明します。
1.従業員の活性化
皆さんは出勤はしたけど、疲労がひどくて頭が回らなかったり、精神的に不安になって仕事が手につかないという経験はないでしょうか?
こういった「出勤しているものの体調が優れず、生産性が低下している状態」のことをプレゼンティーイズムと言います。
このプレゼンティーイズムによる労働生産性の低下による労働損失は大きな影響を与えており、この損失は医療費や病気休業にかかる費用よりはるかに大きいとされています。
健康経営の取組はこのような労働損失を防ぎ、従業員の生産性向上、ひいては企業の活力向上につながるメリットがあります。
また、積極的に健康経営に取り組み「従業員を大切にする会社」として社内外にアピールすることで、企業イメージの向上につながり、人材の確保・定着につながるという効果も期待できます。
2.医療費の増加
ここ30年で日本の医療費は2倍に増加しています。これは少子高齢化、生活習慣病の増加や医学の進歩に伴う高度先端医療の増加といった様々な要因が考えられます。
今後も少子高齢化がより一層進むことからさらなる増加が懸念されます。
一方で、多少保険料率は上がっているものの、賃金は大きく変わっていないことから、保険収入はさほど上がっていません。
これにより、健康保険組合の解散が増えています。
今後、少子高齢化が進む中で健康保険組合が生き残っていくために一番効果的なのは「現役世代の医療費を減らす」ということになります。
そのことから、協会けんぽ、健康保険組合連合会(健保連)では、近年健康経営支援に力を入れているようです。
もし、健康経営に今後取り組みたいという事業者さんがいましたら、まず加盟している協会けんぽ支部もしくは健康保険組合に相談してみるとよいでしょう。
今回は、健康経営が広がる背景についてまとめてみました。
次回ブログ担当時には実際に健康経営に取り組むために何をすればよいかをお伝えしたいと思います。
以上