中小企業診断士 丸田佐和子
【昨年度までの中小企業向け資金繰り支援の振り返り】
コロナ感染が広がった2020年頃から2023年頃まではコロナの影響で資金繰りに窮する中小企業支援策が打ち出され、広く活用されてきました。
その後2024年度にはコロナ融資の返済を含めた資金繰りに窮する中小企業向けの対応策へシフトしていき、「経営改善・再生支援に重点を置いた資金繰り支援」を中心に実施されてきました。
具体的には、民間金融機関にて「経営改善サポート保証(コロナ対応)」が資金繰り施策として活用されていましたが、こちらも2025年3月に終了しました。制度面だけではなく、実際に審査を行う金融機関や保証協会の対応もコロナ前の水準に戻ってきていると筆者も感じています。
【2025年度の資金繰り支援について】
今年3月に中小企業庁が発表した内容についてご紹介します。
まず、上記の「経営改善サポート保証」は(経営改善・再生支援強化型)となり、これまでの(コロナ対応)から保証料率の若干の引き上げがあったものの、後継制度として残った形となりました。
これまでと同様に、経営サポート会議や経営改善計画策定支援事業(405事業)等により作成した経営改善・再生に基づき、経営改善・事業再生を実行するために必要な資金を信用保証協会の保証付き融資で支援するものです。
もう一つ、新しい保証制度が創設されました。「協調支援型特別保証」というものです。
これは、原材料の価格高騰、物価高、人手不足当の影響を受ける中小企業者に対し、金融機関のプロパー融資※と保証付き融資を組み合わせて、多岐にわたる経営課題解決への取組を後押しする保証制度で、2028年3月末までの時限措置として設けられました。
※プロパー融資とは・・・一般的に金融機関が事業融資を行う場合において、信用保証協会の保証等がなく直接責任100%にて実行する融資のことです。
【「協調支援型特別保証」の具体的な内容】
「協調支援型特別保証」の具体的な内容についてご紹介します。
利用要件としては、
- 申込金融機関から本制度による保証付き融資の実行と原則同時に本保証付き融資の実行と原則同時に保証付き融資額の1割以上(融資期間12ヶ月以上)のプロパー融資を受けること
- 申込金融機関の支援を受けつつ、自ら経営行動計画の策定並びに計画の実行及び進捗の報告を行うこと
とされています(中小企業庁ホームページより)。
保証期間は分割返済の場合10年以内で、据置期間は設備資金があれば最大3年まで設定することができます。保証協会の保証付き融資額の1割以上のプロパー融資を調達することができれば、その10倍の金額の保証協会付き融資が申し込めることになります。
【実際に調達を検討する場合のポイント】
プロパー融資の調達ができることが前提となります。
プロパー融資の実績の有無でハードルの高さは変わってきますが、メインバンクの支援姿勢が大きく影響すると言っても過言ではないでしょう。
利用を検討する場合は、上記の要件2にもあげられている「経営行動計画」を策定したうえで、メインバンクに相談することが求められます。
計画策定については、具体的かつ実現可能性が高いと認めれる計画である必要があります。
計画策定はなかなか独力では難しいケースも多いと思います。
その場合は身近な専門家や公的支援機関のサポートを受ける方法もあります。
また、本件に限らず、メインバンクとの関係構築については日頃から意識することも大切なことだと言えるでしょう。
以上