中小企業診断士 馬場正博
最近よく耳にする「生成AI」。試してみたいけれど「どう使えばいいのか分からない」「難しそう」と感じている経営者も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、生成AIを会社の仕事に取り入れるための基本的な考え方と、すぐ使える具体的な方法を、中小企業診断士の視点からわかりやすく整理します。目的はただ一つ、経営者の皆さんが“無理なく”“確実に”効果を実感することです。
1. 生成AIを使うと何が変わる?
中小企業にとって大きなメリットは次の3つです。
1. 時間の節約
例:議事録をまとめるのに1時間かかっていたのが10分で済む。
2. 仕事の質をそろえる
例:営業担当ごとにバラバラだった提案書の書き方を一定の形にできる。
3. 判断のスピードアップ
例:AIに「競合他社の強みを要約して」と頼むと短時間で整理ができ、意思決定に役立つ。
つまり、人手不足を補う道具として使えるのです。
2. プロンプトって何?
AIに指示を出すときの文章を「プロンプト」と呼びます。
これは「旅行の計画を立てて」といった簡単なお願いから、「300字以内で、専門用語を使わずに、見出しをつけて」といった細かな条件まで含みます。
良いプロンプトの例:
「あなたは採用担当者です。以下の強み(教育制度・安定受注・在宅可)を盛り込み、専門用語を避けて300字以内で、見出し→本文→応募要件→福利厚生の順で求人票を作ってください。」
悪い例:
「求人票を作って」
違いは明らかですね。条件をきちんと伝えるほど、AIの答えは使いやすくなるのです。
3. どんな仕事に役立つ?
生成AIは、会社のさまざまな場面で活躍できます。
● 営業:提案書のたたき台作成、商談後のフォローメール文案
● 人事:求人票の改善、面接質問リストの準備
● 総務:社内規程や案内文の下書き
● 製造:作業手順書の整理、不良原因の洗い出し
● 経営企画:会議のアジェンダや議事録の要約
4. 小さく始めて効果を測る
いきなり全社的に導入すると混乱します。おすすめは「小さな実験」です。
例えば、10人の社員がそれぞれ1日30分業務を短縮できたとします。
→ 月20日勤務で1人あたり月10時間の削減
→ 10人なら合計100時間
→ 時給2,000円で換算すると20万円分の効果
→ AI利用料や研修費に月8万円かかったとしても、12万円のプラスになります。
このように、実際に数字で効果を確認することが重要です。
5. 注意すべきリスク
生成AIは万能ではありません。以下の点には必ず気を付けましょう。
● 間違った答えを出すことがある
→ 出力は「現時点での最善の答え」にすぎません。必ず人が確認を。
● 機密情報は入力しない
→ 顧客名や価格表などはNG。外に出ても困らない情報だけを使いましょう。
● 著作権・倫理の配慮
→ 他人の文章をそのまま利用しない。差別や偏見を含まないかチェック。
● 最終判断は人間がする
→ AIはあくまで“補助輪”。経営判断は必ず人が行う。
6. 90日で定着させるステップ
第1ステップ(0〜30日):準備
● 社内ルールを決める(入力禁止情報を明文化)
● 試す業務を3つ選ぶ(例:議事録要約、求人票作成、営業メール)
● 社員向けに基礎研修を実施
第2ステップ(31〜60日):検証
● 効果を数字で測る(短縮時間や再作業の有無)
● うまくいったプロンプトを共有
第3ステップ(61〜90日):定着
● 成功例をほかの部署に広げる
● 社内マニュアルを整備し、研修に組み込む
最後に
生成AIは「魔法の道具」ではありませんが、正しく使えば人手不足や時間不足を補う強力な味方になります。
まずは、
1. 「やらないこと(機密情報は入力しない)」を決める
2. 「やってみる仕事」を3つ選ぶ
3. 「成果を数字で測る」
この3ステップから始めてみてください。
AIの答えは常に検証が必要ですが、それを踏まえたうえで活用すれば、きっと経営の強い武器になるはずです。
以上