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簡易版・貸借対照表診断のすすめ

中小企業診断士 山崎 文

 

9月も半ばを過ぎました。6月が決算期の企業では、新しい決算書が既にお手元に届いていることと思います。
さて、経営者の皆さんは決算書が届いたらどこからご覧になりますか?
損益計算書はこの1年間の経営成績ですので、売上高や黒字か赤字かなど、気になる数字は事前に把握されているのではないでしょうか。

貸借対照表のすすめ

私がじっくり見ることをお勧めしたいのは、貸借対照表(バランスシート、以下B/ Sと言う。)です。

なぜならB/ Sは、事業年度末における財政状態を表すだけでなく、会社設立当初からの経営成績の蓄積を見せてくれるからです。

決算書を見慣れてくると、その企業のB/Sが初見でも、業種を知らなくても製造業か小売業かなどおおよそ想像はつきます。

その企業のビジネスモデルもわかってしまう重要な書類と言えます。

B/Sの中身とは

B/Sを見ていきます。

 

左半分は、資産の運用を表しています。流動資産と固定資産等があります。

流動資産の中身としては、現金預金、売掛金、製品、原材料等があり、その名の通り流動性が高い資産とお考えください。

固定資産は、建物や土地、機械装置をはじめとする有形固定資産、営業権やソフトウェア等の無形固定資産、投資等があります。

 

そして右半分は、資産の調達を表していて、流動負債、固定負債、純資産に分かれています。

流動負債には、買掛金や短期借入金等、短期(ほぼ1年以内)に支払う負債があります。

固定負債は、長期借入金が代表的です。

 

純資産は資本金や利益剰余金等で構成されます。

B/ Sからの簡易診断

この流動資産、固定資産、流動負債、固定負債、純資産の大きさ(金額)を見ていくと、ざっとその企業の財務状態を把握することができます。


流動資産>流動負債であれば、1年以内に支払う流動負債よりも流動資産が多いので、短期的な資金繰りは安定していそうです。厳密に言うと、現金預金や売掛金が多いと安心ですね。


固定資産<固定負債+純資産であれば、長期に渡って使用する機械装置や建物等を長期借入金や自社の純資産の範囲内で賄っていると考えられるので、資金調達の観点からバランスが取れていて良いと思います。


一方で、純資産がマイナスになっているのは、所謂「債務超過」状態にあって、財務が健全な状態とは言えません。おそらく長期に渡って赤字決算が続いているのではないかと思われます。

簡易版とはいえ、慣れるまでは診断に時間がかかるかもしれませんが、難しい指標データを見なくても自社の財務状態をつかむことはできます。過去のB/Sと比べて違いを見ていくのもお勧めです。ぜひじっくりと読み込んでみてください。

 

以上