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トラック輸送業の価格転嫁を考える

中小企業診断士 大口憲一

 

昨今、原材料やガソリン代、人件費などの高騰により、さまざまな業界で価格転嫁が注目されています。

今回はトラック輸送業に焦点を当て、価格転嫁の現状と今後の展望についてまとめてみたいと思います。

 

トラック輸送業の価格交渉の現況

中小企業庁では、毎年3月と9月に「価格交渉促進月間フォローアップ調査」を実施しています。

2025年3月に実施された調査において、発注企業の業種別に集計された価格転嫁の実施状況ランキングでは、トラック運送業のコスト増に対する転嫁率は36.1%で、30業種中最下位となりました。

 

なお、前年同時期に行われた調査では、転嫁率は28.1%であり、1年間で約6%の改善が見られます。

しかし、全業種平均の転嫁率は52.4%であることから、トラック輸送業では依然として価格転嫁が十分に進んでいないことがわかります。

参考URL:中小企業庁調査結果(2025年6月)

 

トラック輸送業の価格転嫁が進まない理由(私見)

ここでは、トラック輸送業において価格転嫁が進みにくい理由について、私なりの考察を述べます。

 

理由その1:「提供サービスに付加価値をつけにくい」

トラック輸送の基本的な価値は「モノを指定された場所に届けること」にあります。

この本質的な機能以外に付加価値を加えることが難しく、価格に反映しづらい構造となっています。

 

理由その2:「小規模事業者が多い」

出典資料によると、トラック運送事業者のうち、従業員数が10人以下の事業者は全体の約50%、保有車両数が10両以下の事業者は約55%を占めています。

こうした小規模事業者は、取引先との関係性や仕事への影響を懸念し、大企業への価格交渉が難しい、あるいは交渉のノウハウを持たないケースが多いと考えられます。

また、保有トラック数が少ない事業者にとって、トラックの稼働率は売上に直結する重要な指標です。

そのため、稼働率を確保する目的で、採算が合わない低価格での受注を行う事例も見受けられます。

出典:全日本トラック協会資料(2024年)

 

理由その3:「運送原価を正確に把握できていない事業者が多い」

私が訪問した事業者や、知り合いの中小企業診断士の話によると、運送原価を正確に把握

している事業者は意外と少ない印象です。

これは他業種にも共通する課題ですが、特にトラック運送業では、概算で価格を設定する

「どんぶり勘定」が多く見られます。

原価を把握できていないということは、価格交渉における根拠や材料が不足していること

を意味し、価格転嫁の障壁となります。

 

トラック輸送業における運送原価

トラック輸送業の運送原価は、原則として以下の3要素で構成されます:

  • 燃料費(ガソリン価格 × 移動距離)
  • 人件費(運転手の時給単価 × 拘束時間)
  • 管理費(トラックの減価償却費、管理部門の光熱費・人件費など)

また、トラック輸送では往路だけでなく復路も存在するため、これを考慮した原価計算が求められます。

 

トラック輸送の「標準的な運賃」

コスト高騰に加え、昨年大きな話題となった「2024年問題」を踏まえ、ドライバーの賃上げの原資となる適正運賃の収受は急務とされています。

人員不足が深刻化するトラック運送業に対し、国土交通省では「標準的な運賃」を設定し、荷役の対価などを意識した環境整備を進めています。

報道発表URL:国土交通省プレスリリース

 

また、以下の全日本トラック協会のWebサイトでは、地域別・距離別に運賃の詳細がまとめられています。

参考URL:全日本トラック協会「標準的な運賃」

 

なお、この標準的運賃は、一般的なトラック輸送業の実勢価格よりもやや高めに設定されているため、実際の価格設定においては、前述の運送原価をもとに算出することが推奨されます。

以上