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ハラスメントの相談があった場合の対応の留意点

中小企業診断士 川口紀裕

 

2019年5月に成立した「改正労働施策総合推進法」(別名パワハラ防止法)が2020年4月1日より中小企業にも適用されるになりました。

各社ではパワハラ防止に向けた対応が必要になります。

(対策の概要は私の前回記事「パワハラ対策できていますか?」をご覧ください。

 

パワハラ以外のセクハラ、マタハラなどの各種ハラスメント対策に共通して注意しておきたい点として、ハラスメントの相談対応があります。従業員からハラスメントの訴えがあった際の対応を失敗すると、世の中からブラック企業の烙印を押されることにもなるので丁寧かつ誠実な対応が求められます。

今回は企業の管理者が部下からハラスメントの相談があった際にどのように対応していくべきかをご紹介します。

 

 

部下からハラスメントに関する相談があった場合の上司の対応

ステップ1 相談環境を整える

部下から相談があったときに、その場ですぐに相談を受けるのではなく、まずは相談する環境を整えます。主なポイントは以下の通りです。

  • 社内の相談窓口を紹介した上で、上司が直接相談にのったしたほうが良いかを相談者本人に確認する(相談者本人が社内の相談窓口を知らないこともあるため)
  • 可能であれば、相談は上司1人ではなく、2名以上で受けるような体制を整える(相談者の許可が得られた場合)
      ※特にセクハラ被害の場合は同性の聴き手を用意する
  • プライバシーを守りながら相談できる場所を確保する

ステップ2.相談者の発言内容のヒアリング

実際に相談をすることになれば、以下のようなポイントに留意しながら、事実情報を収集します。特に被害者本人を責め立てるような聴き方をしないよう留意します。

  • 事実情報を確認する(いつ、誰が、どこで、何を)
  • 相談者にも原因があるかのような責める発言をしない
  • 本人の気のせいではないかという発言をしない
  • 安易にこの問題を解決するといった発言をしない
    (加害者をすぐに処分すると相談者に伝えるのは早計)
  • 相談内容は録音させてもらう

ステップ3.事実関係の有無を確認する

被害者のヒアリング内容が事実であるかを確認します。ただし、基本的には上司が事実関係の有無を確認するのではなく、会社で設置している専門機関(ハラスメント調査委員会など)や第三者機関(弁護士など)に委ねた方が良いです。

  • 加害者に事実関係を確認する
    (必要に応じて)第三者に事実関係を確認する
  • 確認のヒアリングをする際には録音させてもらう 

ステップ4.相談窓口に繋ぐ

仮に上司が事実確認をしたのであれば。それまで収集した情報をもとに、相談窓口に繋ぎます。

  • 相談者の了承を得た上で、相談窓口に繋ぐ
  • 相談者と一緒に窓口担当者と話して、これまで収集整理した情報を提供する 

相談窓口に繋いでからは、会社もしくは第三者による調査委員会によって、改めて事実確認をし、事実であれば対応策を検討し、検討結果に基づき相談者、行為者へのフォローを実施し、再発防止策を検討・実施するという流れが一般的です。

 

 

 

今回はパワハラの相談対応の概要を紹介しました。

なお、パワハラ防止に向けた各種取り組みを始めようと思われた方は「明るい職場応援団」のサイトを参考にしてみると良いでしょう。周知・啓発活動に役立つ様々なコンテンツも提供しています。

明るい職場応援団

以上